こんにちは。バラ十字会の本庄です。
「秋の日はつるべ落とし」という言葉がありますが、今日から東京では、日の入りが午後5時より早くなるとのことです。秋の夜長ですね。
いかがお過ごしでしょうか。
私の友人で作編曲家をしている渡辺さんから、『振動の世界』という題の文章が届きましたので、ご紹介します。
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『振動の世界』
私ごとで恐縮ですが、最近自宅の庭にタイルを敷くために、自分で整地をしました。
土を固めるために転圧という作業を行うのですが、その際に「タンパー」という、木の柄の先に20㎝四方の重い金属プレートが取り付けられたものを地面に叩きつけることによって土に圧力を加え(転圧)、平らに均(なら)していきました。
このとき、硬い土の部分は「カン」というような高い音がして、柔らかい土の部分は「ボスッ」という低い音がします。
私は最初、この作業は、「タンパーを叩きつけた部分の土に圧力をかけて固める」のだと考えていましたが、それだけでなく、叩きつける音や周りの土の動きに注目していると、なかなか興味深いことが観察されました。
■ 土の中の共振
この庭は、四方がコンクリートの擁壁であるため、凹型の上面以外が閉じられた器に砂を満たした状態になっています。
「四方が閉じられているということは、太鼓やギターの弦のように、ある周波数で共振が起こるのかな?」
などと考えながら、ひたすらタンパーを叩きつける作業をしていました。
すると、叩きつけた場所ではなく、ほんの少し離れた場所の土が微妙にタンパーの振動によって波打って動いていることが分かりました。
不思議なことに、タンパーを叩きつけることによって、叩きつけている場所以外の土も振動し、土の高さが自然と揃って平らになっていきました。
この現象が、運動場などのような広い場所で起こるのかどうかまでは分かりませんが、少なくとも私の自宅の狭く(笑)、閉じた場所では、そのようなことが起こることが見られました。
「一定の振動を加えることで、土の密度が揃ってくるのだろうか?」
「この土の上で和太鼓やドラムの練習をすると、いつか平らになるのだろうか?」
などと、ぼんやりと考えながら作業をしていると、「蔵の中で音楽(振動)を聴かせて作ったお酒は、味がまろやかになる」という話を思い出しました。
この場合も整地の作業と似たことが起こり、振動を加えることによって、お酒の成分中の何かに、何かしらの変化が起こるのでしょうか?
調べてみると、蔵などで音楽を流すことによって、焼酎などの熟成タンクや樽に音楽による微細な振動を与えて、液体の分子集団が切り離されて小さくなるので、蒸留酒特有のアルコールの刺激が抑えられ、飲み口がまろやかになるのだそうです。
そうすると、微細な振動を与えるということが重要なのであり、音楽の内容自体に何かそのような不思議な力が特にあるという訳ではなさそうです。
ただし、ジャンルによって特有の周波数特性や音量などが異なるためか、クラシックとジャズ、ロックなどでは、その結果が変わるそうです。
■ 人間の共振
私は音楽活動もしているのですが、発声練習などで胸に気持ちよく響く高さの音があるのを経験的に感じていました。
G3(ソ3)の音(195.998Hz)で、およそ200Hz前後の音が私にとっては胸に響く音です。少し低い音ですが、この音を発声していると確かに体中に微細な振動が発生して、何か、体の中が整えられているような感じがします。
ちなみに、F#4(ファ#4)の音(369.994Hz)では、響く場所がちょうどおでこの中心になり、眉間がムズムズとして、これはこれで、G3とはまた違った心地よい感じがします。
では、微細な振動を人間に与えると、お酒などのように、何か効果があるのでしょうか?
調べてみると、このような効果は医療にも利用されていて、2002年のサッカーW杯直前にイングランド代表のベッカム選手が骨折したときに、振動の利用によって治療期間を短くしたということが知られています。
これは、超音波骨折治療法といって、微弱な超音波を骨折部に当てることで治癒を促す(40%ほど期間を短縮できる)方法だそうです。
そのほかにも、微細な振動を与えることにより、代謝などがよくなるという報告もあるようです。
たとえば、大きな声で歌うと元気が出るなどというものも、単なる精神的なものだけではなく、実際に自身に微細な振動を与えることによって、何かしらの良い効果が体に現れているのかもしれません。
この世界の物質を構成する全ての原子は、何らかの振動をしており、私たち人間もそれらの原子で構成されている以上、人間も振動というものに支配されていると言っても過言ではないのかもしれません。
あ、そろそろタイルを並べなければ! 笑
それでは、今日はこのあたりで……
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ふたたび本庄です。
バラ十字会の教本に紹介されていることのひとつですが、私たち人間も他の生きものも、振動の大海にどっぷりと浸(ひた)って暮らしている振動の集合体だと考えることができます。
そして、人間の五感は、世界に存在する振動の大部分を知覚することができません。超音波、紫外線、赤外線、X線、電波のいずれも、感覚では捉(とら)えられないので、機器がなければ存在を知ることができません。
たとえを使って言えば、私たちは、振動の世界のほんの一部を、五感という狭い窓を通して見ているようなものです。
哲学では、世界のことを、現実(reality)と実在(actuality)に区別して考えることがあります。
自分が知覚している世界が現実であり、自分の知覚とは無関係に存在している世界が実在です(実在などというものは存在しないという説もあります)。
今回話題になった超音波は、人間には知覚することができないので、現実ではないけれども実在だと考えることができます。しかし、犬やコウモリは超音波の一部を知覚することができ、彼らにとっては、それらは現実だと言うことになります。
いったい実在とは、どのような世界なのでしょうか。これを機会に考えてみてください。このことは、人生と世界の謎に深く関わっています。
参考記事:
下記は、渡辺さんの前回の記事です。
では今回は、このあたりで。 またお付き合いください。
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