投稿日: 2023/08/11
最終更新日: 2023/12/25

人生とは何かという問いは、ビッグ・クエスチョンの中でも最大級のもので、このブログ記事の範囲内で、何かまとまりのある結論を皆さんにお話することができるわけではありません。

しかし、この問題に取り組もうとするときに何について調べれば良いか、お勧めの本や参考になる格言なら、お伝えすることができます。

また、この疑問を切実に感じている方々の多くは、きっと、楽しい人生を実現する具体的な方法を知りたいと思っているのではないでしょうか。私が考えた方法ではありませんが、3週間で楽しい人生を実現する方法をご紹介します。

人生とは何か(イメージ)

人生とは何かを知るためには、何を調べれば良いか

◆ マテリアリズムという考え方の片寄り

まず、私たち現代人の多くが持っている考え方のバイアス、つまり考え方の片寄りについてご説明させてください。

というのもこのバイアスが、人生とは何かを知る上で、妨げになることがあるからです。

最近の数十年の間に、先進国に住む私たちの生活は特に、見違えるほど豊かになりました。

テレビ、洗濯機、掃除機の普及、自動車の進歩に始まり、コンピュータの進歩、インターネット、スマートフォンの普及。

文書作成ソフト、表計算ソフト、論文検索。ツイッターやフェイスブック、ユーチューブ。ラインやおサイフケータイなど便利なスマホアプリの数々。

そして最近では、生成AIを中心とした人工知能の活用が本格化し、事務作業や、翻訳や執筆作業の効率を上げるために使われ始めました。

グラフィック画面を操作するロボット(人工知能のイメージ)

このような生活の変化の多くの背後にあるのは産業技術と情報技術の進歩であり、それを支えてきたのは科学、特に数学と物理学と化学の進歩です。

これらの学問は、人類の進歩の一例であり素晴らしいことです。しかし、それらによって生活が大きく改善された影響で、世の中には考え方のバイアス、つまり考え方の片寄りが生じました。

それは、マテリアリズム(materialism)と呼ばれます。マテリアリズムには主に2種類のタイプがあります。ひとつは世界の根源は物質だけだと考える「唯物論」と言われるものです。もうひとつは、人間や他の生物の心は、脳や神経系で起こっている電気の活動と化学反応で説明できるという物理主義という考え方です。

神経細胞(イメージ)
心は、脳や神経系で起こっている電気の活動と化学反応か?

この2つが世の中の主流の考え方になったのは、人類の長い歴史の中でもごく最近のことです。そして、暗黙の合意のようになり多くの人が信じているにも関わらず、それが正しいことを証明した人は誰もいません。

物質の世界を研究する学問の代表は、物理学と化学です。しかし興味深いことに、過去の優れた物理学者の多くが、マテリアリズムのことを誤りだと考えています。この話題には重要な点が含まれていますので、いずれこのブログで取り上げてみたいと思います。

マテリアリズムが正しいのか間違いなのかということは別にしても、物理と化学という学問は、人間が何を目標にして、どのように生きるかという指針を提供することを、そもそも目的にしていません。ですから、人生とは何かを考える上で、これらの学問が直接に役立つことはありません。

では、人生そのものを扱い、生きる目標と指針を直接与えてくれる分野は何でしょうか。大きなテーマですので断言するのがはばかられますが、あえて言ってしまえば、それは哲学と心理学です。

ぴったりと寄り添う女の子と大きな犬(幸せと人生の意味のイメージ)

人生とは何かを知ろうとする人類の努力-哲学と心理学と瞑想について

◆ 哲学について

人類は今まで、少なくとも2,000年以上にわたって哲学を探究してきました。そのうちの西洋哲学(philosophy:フィロソフィー)は、語源から言うと、「聡明さ」(sophia, wisdom)を「愛する」(philo-)ことを意味します。つまり哲学は、人生をより良く生きる聡明さを手に入れることを目的としています。

「哲学」という言葉は、「フィロソフィー」に明治時代の学者の西周(にしあまね)があてた訳語であり、その意味は、世界や人生の根本原理を追求することです。ですから、人生とは何かという問いは、まさに哲学の問いそのものです。

西洋哲学の歴史の中で最も有名な人は、古代ギリシャのプラトンです。彼は「神秘哲学」(神秘学:mysticism)という考え方を唱えました。神秘哲学という言葉を聞くと、何か特殊な分野だとお考えになる方が多いのですが、古代ギリシャのころは哲学と言えば、それは神秘哲学のことでした。

なぜかといえば、当時の哲学者が、人生とは何かを知るために「神秘」(この世界の真の姿)を見破ることと、より良く生きる方法を突き止めることの両方に、並行して取り組んでいたからです。

神秘哲学はマテリアリズムと正反対の考え方です。つまり、世界は物だけで説明することはできず、人間や他の生物の心や意識には、物質ではないものが関わっているという考え方です。

参考記事:

◆ 瞑想について

私が神秘哲学の普及という仕事に携わってから、もう20年近くになります。最初のころは宗教と同一視されることも多く、きちんと理解してくださる方はあまりいなかったのですが、最近は少しずつ事情が変わってきています。瞑想は神秘学の核心にあたる実践ですが、社員研修に瞑想を取り入れる企業が増えています。

瞑想によって、心身をリラックスさせてストレスを解消することができます。リラックスしてストレスが発散されると、仕事での創造性や生産性が向上します。しかし神秘学の立場から言うと、瞑想の効用はそれだけではなく、本来の目的も実はそこにはありません。

では瞑想の目的を、神秘学は何だと考えているのでしょうか。

それは、人生をより良く生きるための練習であり、また、人生とは何か、世界の正体(神秘)を見破るための練習にもあたります。

メカニズムから言えば瞑想とは、マクロコズムの「聡明さ」を自分の意識に取り込むこと、また「内なる自己」の声を聞くことだと言うことができます。

◆ 心理学について

先ほども申し上げましたが、人生とは何かについて考えていくと、多くの場合、人の心と世界はどのような関係にあるかという疑問に行き着きます。ですから心理学は、人生についての疑問を説き明かすために大いに役立ちます。

しかし心理学は広大な分野です。この目的のためには、心理学の中でも、人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)、トランスパーソナル心理学、インテグラル理論が役立ちます。

心理学の理論「スパイラルダイナミクス」が提唱する人間の意識の発達段階
心理学の理論「スパイラル・ダイナミクス」が提唱する人間の意識の発達段階

参考記事:

お勧めの本と瞑想について

◆ お勧めの本

今までにお話ししてきたことのまとめとして、以下の本をお勧めします。

1.『夜と霧』(ビクトール・フランクル著)

2.『インテグラル理論を体感する 統合的成長のためのマインドフルネス論』(ケン・ウィルバー著)

3.『国家』(特にその第7巻、プラトン著)

4.『預言者』(カリール・ジブラン著)

5.『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』(飲茶著)

このうち1~4は、いずれも有名な本なので、インターネットを調べれば、内容の紹介や数多くの書評を見つけることができると思います。5は肩肘の張らない東洋哲学の入門書ですが、内容には芯が通っており本格的です。

インターネットを用いて、これらの本が簡単に手に入れられる現代は、この点に関しては、ほんとうに素晴らしい時代だと思います。

ラファエロ作フレスコ画『アテナイの学堂』、人生とは何かを知ろうとする人類の努力としての哲学
ラファエロ作フレスコ画『アテナイの学堂』、中央の右がアリストテレスで、左がプラトンだとされる。

◆ 瞑想の学習

瞑想については、皆さんにお勧めできる本を、残念ながら私は知りません。良い指導者に出会って学ぶことができれば理想的だとは思いますが、すべての人が自分に合った望ましい指導者に出会えるとは限りませんので難しいところです。

バラ十字会が提供している教材を試してみることも選択肢に入れてください。少し回り道ですが、瞑想の方法は始めてから3ヵ月目に学ぶことができます。瞑想を正しく学ぶためには、いくつかの前提知識と準備が必要なので、カリキュラムがそのように構成されています。

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人生を楽しいものに変える具体的な方法

◆ 読み上げリストを用いる方法

さて、抽象的なご説明が少し続いたので、ここで、人生を楽しいものに変える具体的な方法をご紹介します。

まず紙を一枚用意してください。B5ぐらいの大きさの紙が良いと思います。

そして次のリストを、必ず手書きでその紙に書き写します。


1.できるだけ陽気になろう。

2.他人に対し、もう少し好意的に感じたり、ふるまったりするようにしよう。

3.他人の欠点や誤りに対し、批判をひかえ目にし、もっと寛大になろう。かれらの行動に関し、できるだけ最善の解釈を加えることにしよう。

4.可能な限り私は、成功はかならず訪れるものであり、すでに私は、そうありたいと願っていたパーソナリティに到達しているかのように行動するつもりである。私は、この新しいパーソナリティとしてふるまったり、感じたりする訓練をしよう。

5.自分の意見により、悲観的で否定的な方向に事実をゆがめないようにしよう。

6.一日に少なくとも3回は笑うことにしよう。

7.なにが起きようとも、可能なかぎり、冷静に、知性的にふるまうことにしよう。

8.変えようのない否定的な事実は完全に無視するか、それに対し心を閉じることにしよう。

(出典:「幸福への挑戦」、マクスウェル・マルツ著、産業行動研究所、1967年、165-166p)


そして、この紙をいつも持ち歩きます。また、毎朝決まった時間に、このリストを、声に出しても心の中でも良いのですが、読み上げて、守るために最善を尽くすことを自分に誓います。

そのようにすると、約3週間で、あなたの人生が楽しいものに変わります。

◆ このリストで人生が楽しくなる理由

なぜでしょうか。その理由には潜在意識が大きく関わっています。

人間の潜在意識には、大型船で使われている自動操舵システムに似た特徴があります。

自動操舵システムは、海図上で目標を指示すると、船が海流などの影響を受けた場合も、自動的に航路を修正しながら、目的地へと到達します。

潜在意識も同様に、ひとたび目標が与えられるとその目標を実現しようと自動的に働き続けます。

先ほどのリストは自己信頼が高まるように作られています。自己信頼とは、心の奥底の自分が、表面的な自分を信頼に値する人間だと考えているかどうかということにあたります。

人は誰もが自分が幸せであること、人生が楽しいことを願っています。しかし自己信頼度が低いと、その願いは一貫していない矛盾したものになり、潜在意識に目標として正確に伝わらなくなります。

反対に、自己信頼度が高いと、自分の心の奥が、幸せで楽しい人生を送ることを自分に許すようになり、それが潜在意識に目標として適切に設定されます。

3週間というのは、潜在意識に目標が定着するまでの期間です。どうぞ、試してみてください。

古書と巻物とメガネ(人類が蓄積した英知のイメージ)

人生とは何かを見破るための名言20選

人類の歴史に登場した聡明な人の多くが、何らかの形で、人生とは何かということに対するヒントをそれぞれの言葉で表してくれています。それらを選んで列挙してみました。

皆さんがその真意を受け取る邪魔にならないように、解説は一切付けていません。どうか、気に入った言葉を見つけて、一人になれる静かな場所で味わってみてください。

区切り

◆ 名言20選

1.「人生の移り変わりは、人の心の中で起こる。自身が考えるものに人はなる。それゆえに、我々は心を清らかに保とうではないか。このことは、永遠についての神秘である。」(ウパニシャッド)

2.「人生を信じてください。そうすれば人生は、喜びと悲しみ、そして、知るべきすべてのことを教えてくれます。」(ジェイムズ・ボールドウィン、1924-1987)

3.「この世に客に来たと思えば何の苦もなし。」(伊達政宗、1567-1636)

4.「そもそも、我々が人生の意味を問うべきなのではなく、我々自身が問われているのであり、人生が我々に出した問いに答えなければなりません。」(ビクトール・フランクル、1905-1997)

5.「働いて、自分の糧を得てこそ、生きることを愛することになる。そして、働くことを通して生きることを愛せば、人生のもっとも深い神秘に触れる。」(『預言者』カリール・ジブラン、1883-1931)

6.「人類は進歩の道筋に沿って導かれてきた。そして、我々は眠っているように思われるが、その夢を導く内的な目覚めがあり、そしてその目覚めにより、最終的には、我々は何者なのかという真実を取り戻す驚愕がもたらされる。」(ジャラール・ウッディーン・ルーミー、1207-1273)

7.「人間追い詰められると力が出るものだ。こんなにも俺の人生に妨害が多いのを見ると、運命はよほど俺を大人物に仕立てようとしているに違いない。」(フリードリヒ・フォン・シラー、1759-1805)

8.「あなたが持ち合わせている力以上の強さを、人生が要求することはありません。」(ダグ・マハーショルド、1905-1961)

9.「“宇宙”の心を見いだすこと。それが、偉大な第一歩です。」(ハズラト・イナーヤト ハーン、1882-1927)

10.「私たちは、3つの異なった方法で、人生の意味を発見することができます。それは、1.よいことをすることによって、2.価値のある体験によって、3.苦しむことによって、の3つです。」(ビクトール・フランクル、1905-1997)

11.「恐れさえしなければ、人生は素晴らしい。必要なのは、勇気と想像力と…、少しのお金だけだ。」(チャップリン、1889-1977)

12.「あなたのものであるこの命、あなたが今生きているこの命は、単に存在全体の一部分であるだけではなく、ある意味では全体でもあります。ただこの全体は、一目で見渡せるようには作られていません。」(シュレディンガー、1887-1961)

13.「知恵とは、その深い意味においては、何が起こってもすべてを愛することです。知恵とは、人生の神秘の背後にある美しさ、優しさ、甘さを理解することですから。」(マンリー・P・ホール、1901-1990)

14.「端的に言うと、ここ以外の場所はなく、今以外の時刻は存在せず、それが宇宙の全てです。」(バラ十字会の保管文書より)

15.「他の人の苦しみを和らげることができるのであれば、人生は無意味ではありません。」(ヘレン・ケラー、1880-1968)

16.「人生に、安定した状態などないことを心得ていてください。そして、順調なときに得意になりすぎることも、逆境の時に気落ちしすぎてしまうことも、避けるようにしましょう。」(ソクラテス、BCE469頃-BCE399)

17.「ある友人の日記を自分のものと比べたことがある。彼は、この世界にあらゆることを期待し、何ひとつ完璧でないことにがっかりしている。気づいたのは、私が逆の極端から始めていることだ。何も期待せず、そこそこに良い状況への感謝に、いつもあふれている。」(エマーソン、1803-1882)

18.「外的な年齢とは無関係に、私たちのなかに生きるこの子ども、いつまでも驚くことができ、問い、感激できる、この私たちのなかの子ども。あまりに傷つきやすく、無防備で、苦しみ、慰めを求め、望みを捨てない、この私たちのなかの子ども。それは人生の最後の日まで、私たちの未来を意味します。」(ミヒャエル・エンデ、1929-1995)

19.「他の人を誠実に助けようとするならば、必ず自分を助けることになります。このことは、人生の釣り合いの法則の最も美しい一例です。」(ラルフ・ワルド・エマーソン、1803-1882)

20.「人生とは、ある行き先に着こうとすることではなく、旅そのものです。」(リジューのテレーズ、1873-1897)

区切り

執筆者プロフィール

本庄 敦

本庄 敦

1960年6月17日生まれ。バラ十字会AMORC日本本部代表。東京大学教養学部卒。
スピリチュアリティに関する科学的な情報の発信と神秘学(mysticism:神秘哲学)の普及に尽力している。
詳しいプロフィールはこちら:https://www.amorc.jp/profile/

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